2015年8月7日金曜日

障害年金の初診証明について

障害年金の裁定には、初診日の証明が必要になります。

初診日の証明には、「受診状況等証明書」を医師に記載してもらい、それが難しい場合には、「受診状況等証明書」を添付できない理由書」とともに、客観的に初診日が証明できる書類を添付することが必要です。

では、何も添付せずに前述の「理由書」だけを提出しても、

「初診日が明らかでない」と却下されるケースが頻発しております。


以下は、2015年8月6日付けで出された共同通信社の記事からの抜粋です。


 国の障害年金の受給条件で特定が難しく大きな壁になっている「初診日」の証明について、厚生労働省は6日、これまでの厳格なルールを改め、カルテなどの証拠が提出できない場合でも参考資料があれば本人の申し立てを認めるなど、認定基準を大幅に緩和する方針を決めた。同日の社会保障審議会の部会で明らかにした。
 国家公務員らの共済年金では、カルテなどがなくても本人の申告だけでも認めており、不公平が批判されていた。関連省令を改正して官民格差をなくし、厚生年金と共済年金が一元化される10月1日から実施する。


初診証明が緩和されれば、それまで認められなかった障害年金の受給への道がひらける方が多くなります。

一方で、どのような様式で、どのような記載内容となるか、どの程度実際に認められるかが気になるところではあります。


2015年6月21日日曜日

退職後の休業補償


業務上災害は、労基法、労災保険法等により補償され、休業した場合は休業補償給付等が行われますが、退職した場合はどうなるのでしょうか。

補償を受ける権利は、退職後も変わることはありません。つまり、業務に起因した病気や怪我等は、退職後も補償されます。

では、退職後しばらく経ってから病気が発生した場合などはどうなるのでしょうか。これを休業補償という観点からみていきます。

休業補償を行う理由が傷病であるとき、補償の基準となる平均賃金の6割が給付されます。その平均賃金とは、診断によって疾病の発生が確定した日(算定事由発生日)以前、3ヶ月間に支払われた賃金となります。

しかし、病気の種類によっては、退職後しばらく経ってから発病することも多くあります。その場合、退職した日から算定事由発生日までの賃金水準が考慮され、平均賃金が算定されます。

2015年6月19日金曜日

地域包括ケアって難しい?

最近は、「地域包括ケア」という言葉が盛んに言われます。

ところが、この地域包括ケアについての定義が定まっていないため、色々な混乱があると思えて仕方ありません。

そもそも地域包括ケアとは、
住み慣れた地域でその人らしい暮らしができるよう、切れ目のないサービスを提供し、適切に支援していくことと考えています。
そのためには、医療や介護などの専門職の支援が欠かせないわけです。

ところが、この地域包括ケアを履き違えた考え方を持つ人が、専門職には少なからずいます。

つまり、サービスを提供する側の論理を高らかに掲げ、一般市民をそれに従わせようという、極めて狭量な考え方です。

ある病気を持つ方が在宅生活を送る場合、医療的、社会的な一定の仕組みを守ることが円滑な在宅生活を送ることにつながるわけですが、それを、当事者の理解なく押し付けてはならないわけです。

あまり具体的に書くわけにはいかないので、抽象的な表現で分かり難いですが・・・。

2015年5月21日木曜日

中途採用者のミスマッチ


 中途採用者に対しては、試用期間を盛り込まれることが多い。ただし、単に能力が無いといった理由で本採用拒否にすれば、解雇と同様の高いハードルが求められることが意外と知られていません。

 試用期間を有意義なものにするためには、適切な教育プログラムと、教育責任者による指導が行われることが不可欠です。試用期間の間に、使用者と労働者との間のミスマッチを解消し、本採用後に戦力として役立ってもらうことが何より重要なのです。

 教育訓練プログラムにおいては、会社の実態を把握して実効性のあるものにしなくてはなりません。もしも労働者側が修正不可能なミスマッチを感じれば、本採用拒否による紛争への発展につながる可能性は低くなります。

 

2015年5月14日木曜日

有期労働契約の自動更新をしていませんか?


 

 有期労働契約の契約期間が終了する際、機械的に更新されることが続いていた場合、雇い止めをされた労働者が法廷に持ち込み紛争になった結果、雇い止めが有効とならないことがあります。

 これは、雇い止めをすることが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は、「雇い止めは認められず、同一の労働条件で更新されたものとみなす」とされます。これは、使用者にとっても労働者にとっても不幸な結果です。

 紛争を未然に防ぐために、具体的な更新のための基準が施行規則で例示されています。

1.      契約期間満了時の業務量によって判断する

2.      労働者の勤務成績、態度によって判断する

3.      労働者の能力によって判断する

4.      会社の経営状況により判断する

5.      従事している業務量によって判断する

 有期労働契約の自動更新などは避けるべきであり、更新のための判断基準を設け、更新考課を設ける、書面で交付し、交付式を開催するなどの工夫も行うべきです。

 

2015年5月12日火曜日

労働者派遣のゆくえ


 平成27313日に閣議決定し、国会に提出された「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」では、労働者派遣に関する様々な改正が盛り込まれている。

 今回の派遣法改正では、専門26業務と、それ以外の自由化業務との区分は解消されます。専門26業務とは、専門性が高く派遣制限期間の制約を受けない業務(事務用機器操作や財務処理等)のことでしたが、一般事務との判別が難しく、行政指導が厳格化された時期もあったこともあいまって、あまり実用的ではありませんでした。

 今後は、同一の組織単位(課など)において、同一の派遣労働者を、3年を超えて受け入れてはならないという「個人単位」と、同様に、3年を超えて同一の事業所において受け入れてはならないという「事業所単位」の派遣制限期間という区分になります。

 また、派遣先においては、同一の事業所において派遣労働者が途中で変わったとしても、3年を超えて、これを受け入れてはならないという原則があるものの、過半数組合や過半数代表者の意見を聴取すれば、その延長が認められ、延長回数に制限はないとされています。さらに、過半数組合等が前述の意見聴取に対し異議を述べた時は、延長の理由や対応方針等について、派遣先は説明義務を果たすという手順を踏むこととなります。これにより、 「3ヶ月間のクーリング期間を挟む」といった、無理難題は解消されるものと思われます。

 「個人単位」の制限においても、受け入れ先の組織単位(課など)を変えることにより、3年を超えて派遣労働者として就業を継続することは認められています。ただし、「事業所単位」の派遣制限期間に抵触しないことに注意が必要です。

 このように、期間制限違反が「直接雇用のみなし規定」と関連付けられる恐れが大幅に低下することとなり、労使間の無用な紛争が防げることとなりそうです。



2015年5月10日日曜日

その訪問、どの公的保険適用ですか?

 前回、訪問看護の話題が出ましたので、関連する話をします。

 訪問看護の提供には、「訪問看護ステーション」と「医療機関」とがあり、診療報酬と介護報酬の両方の公的保険の給付が行われます。対象者(患者)が要介護認定を受けていれば原則、介護保険適用ですが、要介護認定を受けていないなど、医療保険適用の訪問看護は、原則11回、週3日まで、一人の対象者に対し一ヵ所の訪問看護ステーションに限られる形で利用できます。

厚生労働大臣が定める20の疾病等(特掲診療料の施設基準等別表第七に掲げる疾病等)の状態である場合は医療保険による適用となり、急性増悪等で主治医が頻回の訪問看護を一時的に行う必要性のため、特別訪問看護指示書が発行された場合も、14日間に限り医療保険の訪問看護が提供されます。

 特別指示書による医療保険適用の訪問看護は、急性増悪期のほか、退院直後、終末期なども含まれます。特別指示書は、原則月1回の発行ですが、気管カニューレを使用していたり、真皮を超える褥瘡の場合には、月2回発行できます。

 また、前述の20の疾病等や特別指示書による医療保険適用の場合は、1日複数回の訪問や、週4日以上の訪問が可能となるほか、複数の訪問看護ステーションから実施でき(20の疾病等の場合は3ヶ所、特別指示書の場合は2ヶ所)、グループホームや特定施設に入居する患者に対しても提供できます。

 さらに、末期の悪性腫瘍の場合、特養やショート利用中の利用者に対しても、医療保険による提供が可能です。そのほか、精神科訪問看護も医療保険の適用となりますが、ここでは省略します。

 介護認定を受ける利用者が訪問看護を利用する場合、しばしば問題になるのが「区分支給限度額」の問題です。医療保険が適用される訪問看護を組み合わせることで、他の介護保険サービスを利用できる余裕が生まれます。